美容室BIJIN
空席を減らす タイムリーな情報発信
東京・江戸川区に不思議な美容室がある。中村俊明店長(45)と三名の女性スタッフが切り盛りする、美容室BIJINだ。
一般的に美容室は、OL達が休みの土日になると順番待ちのお客さんが列をつくる。だが同店に関して言えば、そうした光景は見られない。それでいて、店内に五つあるシートはいつも埋まっている。その秘密は、中村店長が実践する携帯マーケティングにある。
中村店長が携帯電話を使って行っているのは、毎週金曜日の午後にメールマガジンを会員顧客に向けて配信すること。そのメルマガには土日の予約状況が時間ごとに記されており、同店の主要顧客である二十〜三十代のOL達はそのメールを見てから、どのタイミングで店に行くかを決める。
「お客さんの来店が集中する時間帯の緩和に加え、稼働率が向上しました。以前は店が混んでいるわかった途端、他店に足を運んでしまうお客さんもいましたが、メルマガのおかげでそうした機会損失はだいぶ減りましたね」
中村店長の携帯メールは、金曜日のメルマガだけではない。例えば「雨や台風などの影響で今日は来店客が少ないかも・・・」と朝の天候を見て思った場合、『本日は20%オフのキャンペーンを開催します』と記したメールを発信する。その告知効果は意外に大きく、本来なら空席ばかりの日であっても、ふだんに近い数のお客さんを集められる。
「雨の日以外にも、『今日は日曜だけど予約が少ないから10%オフにしよう』と思えば、すぐにメールを飛ばします。すると、5分以内に予約の電話が鳴りますよ(笑)」
携帯メールのすごさは、発信後すぐに相手に見てもらえる即時性≠ノある。朝のうちにメールを出せば大抵、昼頃までには見てもらえるのだ。中村店長のこうした集客アプローチは、携帯メールの強みを最大限に活かしたものといえる。
低コストで行えるDM配信
中村店長が携帯マーケティングをはじめたのは一昨年夏から。ダイレクトメール(DM)の発送回数を増やしたい、と思ったのがそもそものきっかけだった。
「郵送によるDMを年間5回ほど出していたのですが、既存客との結びつきを深めるためには、もっと回数を増やす必要がありました。しかしそうはいっても、一回のDM発信に制作費や郵送費を含めて10万円以上はかかります。小さな美容室が簡単に捻出できる額ではありません。そこで目を付けたのが、携帯マーケティングだったのです」
携帯電話のメール機能を使ったDM発信ならば、料金はそれほど高くない。同店の場合は、携帯マーケティングをサポートするASP業者のサービスを利用したことで、月額5000円(定額)で済んでいる。その金額で何回でも出せるわけだから、かなり安い。現在、一ヶ月あたり7〜10件のメールを約1000人の会員顧客に向けて発信しているという。
メールの内容はというと、前述したメルマガや臨時キャンペーンの告知以外にも、中村店長がどこかに旅行にいったときの土産話や、最近の店内での出来事などを面白おかしく紹介する場合もある。要は、店内でカットやパーマをしながらお客さんに語りかけている世間話をメールで配信しているわけだ。それによって、店の存在をより身近に感じてもらう。既存客をリピーターとして囲い込むための一つの策なのだ。
実際、その効果は現れている。昨年、同業者の多くが売上を10%以上落とすなかで横這いを保つことができたのは、既存客の離反を防ぐのに成功しているからに他ならない。
同店の立地条件は決して良くない。JR新小岩駅と都営新宿線・船堀駅とのほぼ中間に位置し、どちらの駅からもバスで10分ほどかかる。にもかかわらず、千葉や神奈川、あるいは都心から来るお客さん達を固定客化できているのは、中村店長やスタッフの腕もさることながら、携帯メールを使った集客活動が功を奏しているからといえる。
カードを使ってメルアド収集
携帯マーケティングを始める上で一番の課題と言われる、顧客のメールアドレスの収集については、「メール会員募集」の旨を記したカードを使っている。そのカードには「空メール」用の送信アドレスが書かれており、ユーザーはそこに未記入のメールを送れば、会員登録サイトにジャンプが可能な折り返しメールがすぐに届く。
「会員登録時には、『メールアドレス』『性別』『年齢』『誕生月』『郵便番号』を教えてもらっています。名前や住所、電話番号といったプライバシー色の強いものについては、個人情報の漏洩を気にするユーザーのことを考え、あえて訊いていません。多くの人たちが気軽に会員登録してくれるのは、それが理由なのかもしれませんね」
集めた顧客情報はデータベースに蓄積し、「20歳代限定キャンペーン」や「誕生月特別キャンペーン」のお知らせをする際などに活用している。データベースの検索機能を使えば、該当者のアドレスを簡単にピックアップできるのだ。中村店長は今後もこうした機能を用いて、魅力的なキャンペーンを提案していくつもりだという。 |